文部科学省の事後評価では、「本研究は国民的な関心事であるにもかかわらず、収集した情報の整理が不十分であるのに加えて、国民の電磁場の健康リスクに対する漠とした不安に答えていると言えないため、結果として優れた研究であるとは言えず極めて残念な結果に終わった」として、一番低いC評価(優れた研究ではない)が与えられていました。
こちらの話は、新聞では取り上げられていません。
有害性がいろいろと議論されている一方で、電波や磁場は病気の治療に応用されています。
技術的に確立しているのは、ハイパーサーミアと呼ばれる放射線治療です。
ガン細胞は正常な細胞に比べて高温に弱いため、マイクロ波などの電波をガン組織に集中的に当ててガンを除去する技術で、原理は電子レンジと同じです。
磁場の中で、骨折した実験動物が早く回復したという報告もあります。
ただし、そのメカニズムはわかっていません。
かなり強い静磁場の中では、人間の血流が良くなって腰痛などの痛みが緩和されたという報告があります。
磁石の入った紳創富や布団、磁石でできたブレスレットなどは、そのような効果を期待したものなのでしょう。
けれども、普通の磁石が作るような弱い静磁場にどれだけの効果があるのかはわかっていませんし、磁場が血流を改善するメカニズムについても仮説の域を出ていません。
非常に強い低周波電磁場の中では、細胞の中で「何かが起きている」ことは確かなようですが、その結果なにがしかの変化が起きるのか、起きるとすれば何が起きるのかまではわかっていません。
発ガン性についてもそれ以外の正負の健康影響についても、まだにはっきりしないのが電磁波です。
なぜフロンは禁止されたか「オゾン層が薄くなって紫外線が強くなると、ガンになるのよ」電車の中でそんな話をしている親子がいました。
オゾン層や紫外線という言葉は、すっかり馴染んだ言葉になったようです。
紫外線は生物に有毒です。
皮層表面の細胞に吸収された紫外線は、遺伝子を構成する物質であるDNAを損傷します。
DNAが自力で修復できないほど激しく損傷されると、細胞はガン化したり死んだりします。
紫外線が細胞を殺す力を利用しているのが、殺菌灯とか滅菌灯とか呼ばれるものです。
サウナやスポーックラブに行くと、共用のクシを殺菌するガラス容器が置かれています。
あの中に取り付けられている青く光っているライトが殺菌灯で、空気清浄機や冷蔵庫にも取り付けられています。
布団やダンスの奥に長い間しまっておいたものを、晴れた日に外に出して「虫干し」するのも、乾燥きせるのと同時に、細菌やカビを紫外線で殺す効果を期待してのこと。
昔の人は紫外線の存在は知らなくても、日光にあてれば虫が死んでカビも生えにくくなることを経験から知っていました。
太古の地球にはオゾン層がなく、太陽が放出した強力な紫外線はそのまま地上に降り注いでいました。
もしも最初の生命が陸地で生まれかかったとしても、たちまち紫外線に焼かれてしまったことでしょう。
紫外線は水に吸収され、水中までは届かないので、生命が誕生し進化したのは海中でした。
その後、海中で光合成をする藻類や植物が誕生し、二酸化炭素と水から有機物と酸素を作ります。
そして酸素が海中に溶けきれなくなると、徐々に空気中にたまり始めました。
海から空気中に放出された酸素は紫外線に分解され、再結合してオゾン分子になります。
植物の力で作られた酸素は徐々にオゾンに変化し、上空にオゾン層が形成されるようになりました。
そして、オゾン層が紫外線を吸収し始めます。
いまから4億年ほど前になると、地上に届く紫外線はかなり少なくなりました。
生物は陸に上がっても生きていけるようになり、陸上生物の進化が始まりました。
人間が作ったハロカーボンという物質は、このオゾン層を破壊してしまいます。
カーボンは化学的に安定かつ無害で、常温で気体のものもあれば液体や固体など様々なものがあります。
テフロンという商標名で知られるポリフッ化エチレンもこの仲間で、フライパンの表面に塗ると焦げつきがなくなります。
ハロカーボンの中でも大量に利用されたのが、分子量が小さいフロンでした。
常温では気体か液体で、無害で腐食性がなく、揮発しやすいが燃えにくく、多くの物質をよく溶かします。
さまざまな用途に用いることができるので、開発された当時は「夢の物質」ともてはやされました。
フロンの用途として重要なのが冷却材です。
病院で注射をする時に、消毒用のアルコールで腕を拭かれると冷たく感じます。
アルコールが液体から気体になる時に熱を奪うからで、これを気化熱といいます。
気化しやすいフロンは大量の熱を奪うことができるので、この性質を使って冷蔵庫やエアコンが作られました。
その気化しやすさはスポンジの発泡剤に、多くの物質をよく溶かす性質はスプレー缶の噴射剤に活かされました。
欧米では噴射剤や冷却材として多く使われてきたフロンですが、日本で最も多く利用されたのは洗浄剤として、でした。
油をよく溶かすフロンは、半導体や精密機械の製造工場で使われてきたのです。
ほんの少しの汚れが命取りになるハイテク部品は、挨を限界まで除去する必要があります。
国際社会というのはなかなか合意を得にくいところですが、オゾン層保護に関してはかなり早いペースで合意を得ることができました。
フロンがオゾン層を破壊するらしいということで、対策の枠組みを決めるウィーン条約が1985年に作られました。
そして、いよいよフロンが悪そうだということがわかまで少なくしたクリーンルームの中で、徹底的に洗浄きれた材料から製造されます。
フロンは空気より重たい分子ですから、放出されても一気に上昇したりしません。
時間とともに拡散して、ゆっくり上空へと上がっていきます。
そして紫外線が強くなる高度にまで達すると、紫外線がフロンを分解します。
この時に放出された塩素原子が、周辺にあるオゾン分子を破壊します。
けれどもふつうは塩素原子は上空ですぐにオゾンを破壊しない別の物質に変化してしまうので、オゾンが急減することはありません。
ところが春先の南極上空では、特殊な条件が重なって大量の塩素原子が一斉に発生します。
これが周辺のオゾンを一気に破壊するので、南極上空でオゾン層が薄くなるオゾンホールという現象が観察されるようになりました。
条約が作られた当時、フロンがオゾン層を破壊するということに懐疑的な科学者は少なくありませんでした。
フロンを生産、利用している国も慎重で、議定書の採択当時は生産量の部分的削減くらいしか決められませんでした。
この頃、フロン規制に一番積極的だったのは、いま温暖化対策に最も不熱心な米国です。
逆に、ヨーロッパと日本は消極的でした。
米国では、フロンを使ったスプレーを買わない市民運動が盛んで、政府はこれに配慮しなければならなかったのです。
さらに米国には、フロン対策を進める重要な理由がありました。
世界最大のフロンメーカーである米国のデュポン社が、この年に代替フロンの開発に成功していたのです。
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